【頚椎症性脊髄症】首・肩の痛みや手足のしびれの原因は?整形外科医が監修して解説
「頚椎症性脊髄症」や「頚椎症性神経根症」という病名をご存じでしょうか?首に位置する背骨の一部で、7つの骨からなる部分を「頚椎」と呼びます。加齢などの影響で変形する状態を「頚椎症」と言います。頚椎の変形によって根神経や脊髄が圧迫されると、首や肩甲骨周辺の痛み、さらには首から肩、腕、手にかかる痛みやしびれが起こることがあります。 これらは、スマートフォンやパソコンを同じ姿勢で長時間使用することや、運動不足なども原因の一つと考えられています。 今回は、この「頚椎症性脊髄症」と「頚椎症性神経根症」について詳しく解説します。

今は小学生もスマホやタブレットを使う時代なので
若い世代の方も気をつけたい病気ですね……
頚椎症性脊髄症と頚椎症性神経根症
頚椎症性脊髄症とは
背骨同士をつなぎ、クッションの役割を果たしている組織は「椎間板」と呼ばれます。この椎間板は、20歳頃から徐々に変性し、いわゆる”老化現象”が進行するとされています。これにより、頚椎の脊柱管(骨の中のトンネル)内にある脊髄が圧迫され、しびれなどの症状が現れます。 この状態を「頚椎症性脊髄症」、または「頚髄症」と呼びます。
頚椎症性神経根症とは
しびれなどの症状は頚椎症性脊髄症と同じでも、椎間孔(脊髄から手のほうへ分かれる神経の通り道)が狭くなり、神経根と呼ばれる部分を圧迫している場合があります。これは頚椎症性神経根症と呼ばれます。頚椎症性脊髄症と頚椎症性神経根症、ともに頚椎症による神経の圧迫が原因で両者を合併することもあります。


頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症の症状
どちらも首から手先にかけての痛みやしびれを引き起こします。ボタンの付け外しやスマートフォンの操作など、手先を使った細かい作業が難しくなったり、筋力の低下や感覚の麻痺が起こることもあります。また、上を向くような動作で首を後ろへ反らすと、脊柱管が狭くなったり、神経根が圧迫されるため、症状が強く出る場合があります。
頚椎症性脊髄症の主な症状
左右両側に症状を引き起こすことが珍しくなく、重症化した場合は下半身にまで症状が及びます。そこまで至ると、歩く際に足がもつれたり、ふらついてバランスを崩しやすくなり、更なるけがや事故につながる恐れもあります。比較的若年の方であれば、かけ足や片足立ちがしづらくなるなど、軽度の症状で自覚できますが、高齢者では気づくのが遅れる場合があります。また、神経症状が重症化すると、尿が出づらくなったり、頻繁に尿意を感じるなどの排尿障害を引き起こすこともあります。このように、一見首とは関係のなさそうな症状だったとしても、頚椎症が原因の場合もあるので、気になる症状は必ず医師に伝えるようにしましょう。



あなたのその気になる症状は、実は「首」が原因かも⁈
頚椎症性神経根症の主な症状
通常、障害を受ける神経根は片側のみです。そのため左、右どちらか一方の腕や手など限局した部分に、痛みやしびれなどの症状が現れることがあります。また、神経根症が進行すると、自律神経の影響で発汗異常や血流障害が起こり、手指の冷えなどを感じることもあります。
診察・検査
腕や手のしびれ・痛みがある場合、首を後ろに反らしたときに症状が悪化するかを確認します。また、手足の反射を調べたり、レントゲンで頚椎に変化が見られるかの確認や、MRIで脊髄や神経根の圧迫、骨の突起による神経の通り道の狭まりがあるかを調べて診断します。
しかし、中年以降の多くの人はレントゲンで頚椎の変化が見られ、MRIでも脊髄が圧迫されているように見えることがありますが、これらが必ずしも症状と結びつくとは限りません。そのため、検査の結果だけで診断することは難しいです。また、頚椎に関わるほかの病気や、一部の神経内科の病気は似たような症状を引き起こすことがあるため、慎重に判断する必要があります。



当院ではレントゲンとMRI、両方の撮影ができます!
治療
保存療法
頚椎症性脊髄症や頚椎症性神経根症と診断された場合、多くは手術をせずに保存療法が選ばれます。軽い症状であれば、首に負担をかけない姿勢や動作の指導から始め、症状の程度に応じて薬での治療を行います。
痛みを和らげるために、まずは非ステロイド性消炎鎮痛薬が使われます。また、しびれを伴う痛みや、突発的な鋭い痛みには「神経障害性疼痛治療薬」が、筋肉の緊張を和らげる目的では「筋緊張弛緩剤」が使用されます。痛みが強く続く場合には、ブロック注射なども行われます。
リハビリでは、温熱療法や電気治療、頸椎牽引を行い、症状の緩和を目指します。また、首の筋肉の状態を整え、筋力を鍛えることで、頚椎への負担を軽減します。必要に応じて、首を支えるための「頚椎カラー」(むち打ち治療などで使われるコルセット)を装着することもあります。
「頚椎症性脊髄症」の場合、軽い転倒などの衝撃でも四肢麻痺(脊髄損傷)につながる可能性があるため、転ばないよう十分な注意が必要です。
「頚椎症性神経根症」は、基本的に時間とともに自然に回復する病気です。首を後ろに反らさないように気をつけながら、症状が強いときは消炎鎮痛薬を使用します。完治までに数か月以上かかることもありますが、激しい痛みの時期が過ぎた後も、根気よく治療を続けていくことが大切です。





病気になりにくい体づくりをすることで、根本から治療することが期待できます。当院では、充実した設備とスタッフによるリハビリが受けられます!
手術
筋力の低下や感覚の麻痺がある場合、または日常生活に支障をきたすほど症状が強い場合には、手術が検討されます。手術方法としては、首の後ろを切開して脊髄の通り道を広げる「椎弓形成術」や、首の前側から切開し、神経を圧迫している椎間板や骨の突起(骨棘)を取り除いて固定する「前方除圧固定術」が一般的に行われています。
また、近年では一部の医療機関で、内視鏡を使用した負担の少ない手術も行われています。内視鏡手術は体への負担が少なく、入院期間が短縮され、早期の社会復帰が期待できるのが特徴です。そのため、高齢の方でも比較的安全に受けられる手術として注目されています。
手術が必要かどうかを判断するためにも、まずは整形外科の医師に相談し、最適な治療方針を決めることが大切です。



人によって最適な治療法はさまざまです!
予防法
頚椎症は、加齢や長年にわたる負担の蓄積によって引き起こされることが多いですが、加齢による変化の程度には個人差があります。そのため、どのような人が発症しやすいのか、また、どのような要因で重症化しやすいのかは、まだ明確には分かっていません。
長時間の下向き作業や、首を反らす動作を繰り返すことが原因の一つと考えられています。また、姿勢が悪い状態が続くことや、重いものを持ち上げる動作、頚椎に過度な負担をかける運動などは、症状を悪化させる可能性があります。そのため、日常生活の中で首への負担を減らすよう意識することが、予防につながるでしょう。





パソコン作業が多いから気を付けないとですね……。



長時間パソコンの画面を見るときなどは
こまめに休憩をとり、姿勢を変えるようにしましょう!
医師のアドバイス・まとめ
頚椎症性脊髄症や頚椎症性神経根症は、高齢の方に多くみられる病気です。痛みやしびれといった症状だけでなく、進行すると手が思うように動かせなくなる「麻痺」や、バランスを崩しやすくなる「歩行障害」が現れることもあります。
首を動かしたときに手のしびれが強くなる場合は、頚椎の異常が関係している可能性があります。早めの診断と適切な治療が大切ですので、気になる症状があれば、お気軽に当院へご相談ください。



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せんだい整形外科クリニックでの治療費の例
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
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レントゲン(6方向) 処方箋 初診の診察 | 約900円 | 約1,780円 | 約2,670円 |
物理療法 (電気治療、ウォーターベット) 再診の診察 | 約110円 | 約220円 | 約330円 |
運動器リハビリ (理学療法士) 再診の診察 | 約450円 | 約890円 | 約1,340円 |
・処方箋 初診の診察・レントゲン(6方向) |
1割負担:約900円 |
2割負担:約1,780円 |
3割負担:約2,670円 |
再診の診察・物理療法 (電気治療、ウォーターベット) |
1割負担:約110円 |
2割負担:約220円 |
3割負担:約330円 |
再診の診察・運動器リハビリ(理学療法士) |
1割負担:約450円 |
2割負担:約890円 |
3割負担:約1,340円 |