膝の「カクッ」「引っかかり」は【半月板損傷】? 原因と治療を現役医師が解説
膝は歩く・走る・しゃがむときにクッションの役割を果たしています。そのため、膝が傷つくとクッションが効かなくなり、動きに支障をきたして日常生活が不自由になります。特に「半月板(はんげつばん)」を損傷すると痛みや動かしにくさが出て、歩くのがつらくなることがあります。
「半月板損傷」と聞くとスポーツ選手のケガを思い浮かべる方が多いですが、実は日常生活の中で高齢の方が受傷することもよくあります。半月板は自然に治りにくいため、受傷後は以前のように何の支障もなく膝を使えるとは限りません。しかし、適切な治療とリハビリを続ければスポーツ選手も含め多くの方が時間をかけて復帰しています。治療に積極的に取り組むかどうかで、その後の生活の質が大きく変わります。

膝を守るためにも、この記事をぜひ最後まで読んでください!
半月板損傷とは
半月板(はんげつばん)は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にあるC字型のクッションのような組織で、膝の内側と外側にそれぞれ一つずつあります。半月板は膝の骨や靭帯を支えて関節を安定させると同時に、衝撃を吸収して膝の動きを滑らかにする役割があります。膝は歩行時に体重の約5倍の力がかかると言われ、そんな膝を守る重要なパーツです。



歩く時って、膝に体重の5倍もの負荷がかかるんですね!



私の体重だと××(自主規制)kg⁉恐ろしいです……。
半月板は普段は強い負荷に耐えていますが、思いがけない衝撃や急な力が加わると傷つくことがあります。半月板損傷では膝を曲げ伸ばしすると痛んだり引っかかったりし、放置すると軟骨を傷めて将来的に変形性膝関節症に進むこともあるため注意が必要です。半月板は自然には治りにくいので、損傷したら早めに治療を受けることが大切です。
半月板損傷の原因
膝をひねったり、着地がうまくいかなかったときに半月板を傷めることが多く、特に若い人ではスポーツ中の急な方向転換や切り返しで起こりやすいです。一方、高齢の方は足腰が弱っていたり転倒しやすいため、日常のちょっとした動作で損傷することもあります。激しい運動をしていない方でも注意が必要です。
半月板が傷つく原因は大きく分けて2つあります。
ひとつは膝を強くひねるなどの一度の大きな力で半月板が脛骨と大腿骨の間に挟まれて損傷する「単独損傷」です。
もうひとつは前十字靭帯など膝にある他の靭帯の損傷に伴い、脛骨がずれて半月板に大きな負荷がかかって損傷する「合併損傷」です。これ以外にも、繰り返しの小さなストレスや加齢による変性で損傷することがあります。なお、アジア人は、先天的にC型の中央のくぼみがなく半月板損傷を受傷しやすいとされているので特に注意が必要といわれています。
半月板が損傷しても、痛みの主原因は必ずしも半月板そのものではありません。痛みは大きく分けて
- 筋収縮:周囲の筋肉がぎゅっと緊張すること
- 患部の炎症:傷ついた組織で起きる炎症
の2つによって生じます。筋収縮は、衝撃や強い負荷から膝を守ろうとして筋肉が固くなる反応で、それ自体が痛みを引き起こします。炎症は損傷部の修復反応で、腫れや関節に水がたまることもあり、これも痛みの原因になります。


半月板の働きがそのまま失われると、膝の軟骨に過度な負担がかかります。やがて軟骨がすり減り、変形性膝関節症に進行することがあり、数年〜数十年後に人工関節が必要になる場合もあります。放置すると深刻な病気につながりやすいので、早めの対応が大切です。
半月板損傷の症状
半月板損傷は軽い場合と重い場合で症状が違います。軽いときは膝を曲げたときの痛みや不安定感、膝がなんとなく引っかかる「キャッチング」の症状が出ます。重いときは「ロッキング」といって、断裂した半月板が関節内に引っかかり、膝が伸びなくなったり動かなくなることがあります。重症では痛みが強く歩行困難になったり、関節に水がたまって腫れることもあります。前十字靭帯の損傷を伴うと、関節内に血がたまり腫れはさらに強くなります。



診察ではロッキングの有無を確認するほか、膝を屈伸させたり、押したり、歩行のテストなどをします。詳しくは次で説明します!
半月板損傷の診断・検査
まず問診で症状や受傷の経緯、普段の体の状態をうかがいます。その後、膝の見た目や腫れ、内出血の有無を確認(視診)、直接触れて痛みの場所や動きの状態を調べます(触診)。特に重要なのが「マクマレーテスト」と呼ばれる検査で、膝を曲げた状態で捻ったり伸ばしたりして出る音や痛みを確かめます。マクマレーテストで陽性なら半月板損傷の可能性が高いと判断します。


画像診断では主にレントゲン検査とMRI検査を行います。レントゲンでは半月板自体は映りませんが、骨折や関節の変形など、骨を中心とした変化の有無を確認します。診察やレントゲンで半月板損傷が疑われた場合は、半月板の損傷部位や程度を正確に評価できるMRI検査に進みます。MRIではどのように断裂しているか(縦断裂(じゅうだんれつ)、水平断裂(すいへいだんれつ)、横断裂(おうだんれつ)、弁状断裂(べんじょうだんれつ)など)まで詳しく把握でき、断裂パターンにより症状や治療方針が異なるため丁寧に確認します。





「おやま整形外科クリニック仙台院」ではレントゲンとMRI両方の検査ができます!
半月板損傷の治療


治療は大きく保存療法と手術療法に分かれます。手術はさらに、損傷部を取り除く切除術と、断裂した半月板を縫合して修復する縫合術に分けられます。どちらを選ぶかは、損傷の程度・部位・ロッキングの有無・早期復帰を望むスポーツ選手かどうかなどの症状や、術後の活動性を考慮して決定します。
保存療法
まず保存療法についてですが、損傷が比較的軽度で、血流の豊かな辺縁部(外側など)が傷んでいる場合は半月板の回復が期待できます。逆に損傷や変性が進んでいて縫合による修復が難しいケースでは、手術が適さず保存療法を選ぶことになります。その場合は患部を安静に保ち、鎮痛剤などで痛みを管理しながら経過を観察します。併せてリハビリを行い、関節の滑らかな動きを取り戻しつつ筋力を強化して、日常生活やスポーツへの復帰を目指す、という流れになります。
手術療法
内側の半月板は外側に比べて血行が乏しく自然に再生しないため、内側を損傷した場合は原則として縫合による修復が必要になります。
加えて、ロッキングで膝の屈伸が不能な場合や、保存療法を行っても症状が改善しない場合も手術が検討されます。
手術法は大きく 「切除術(せつじょじゅつ)」 と 「縫合術(ほうごうじゅつ)」 の二つに分かれ、どちらも関節鏡(膝用の内視鏡)を使って行います。
切除術 は損傷した部分を取り除く方法で、手術時間が短く済み、術後の復帰も比較的早いのが特徴です。
一方 縫合術 は断裂部を縫合して半月板をできるだけ温存する手術で、切除術より手術時間やリハビリ期間が長くなり、仕事やスポーツへの復帰も遅れがちですが、長期的には半月板を残せるため変形性膝関節症の発症リスクを下げるなどの利点があります。
ただし、損傷が高度で縫合が困難な場合や、治癒しにくい辺縁部などが傷んでいる場合は縫合の適応とならず、切除術が選ばれることになります。
リハビリテーション
保存療法でも手術療法でも、半月板損傷で最も重要なのはリハビリテーションです。リハビリの目的は主に
- 膝の可動性をできるだけ元の状態に戻すこと
- 膝周囲の筋力を強化して関節への負担を軽減すること
の二点です。保存的治療を選んだ場合でもこれらを目標にリハビリを行います。手術を行った場合は術後に腫れや疼痛が強くリハビリを一時控えることがありますが、安静期間が長引くほど筋力低下が進むため、創部の治癒状態を確認しながらできるだけ早期に開始するように時期とメニューを調整します。なお、松葉杖を用いた歩行練習は通常手術の翌日から始め、徐々に負荷を上げていくのが一般的です。
術後のリハビリは手術法によって期間が異なり、一般に切除術の方が縫合術より回復が早い傾向があります。スポーツ復帰の目安は、部分切除でおよそ4ヶ月程度、縫合術で約5ヶ月程度とされています。ただし、半月板損傷は膝の外傷の中でも重症になりやすく、たとえ治療が順調でも完全に元の状態に戻ることは稀です。受傷後は膝を大切に扱い、体重管理や十分なストレッチ、筋力トレーニングなどで膝への負担を減らすことが重要です。リハビリ終了後も地道な取り組みを続ければ、再発を防ぎつつ受傷前と近い生活を取り戻せる可能性があります。





「おやま整形外科クリニック仙台院」では、経験豊富なスタッフと整った設備で術後の回復を全力でサポートします!
監修医師のアドバイス
半月板損傷は膝の中でも重いケガです。スポーツ選手なら長期離脱を余儀なくされることがあり、働く方でも仕事に大きな影響が出ます。気をつけていても起きることはありますが、無理をしすぎない運動や作業が大切です。全力で取り組むことも重要ですが、ケガを予防するために自分の体をコントロールする意識も忘れないでください。どうぞお気をつけてお過ごしください。



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おやま整形外科クリニック仙台院での治療費の例
| 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
|---|---|---|---|
| 初診の診察 レントゲン(6方向) 処方箋 | 約900円 | 約1,780円 | 約2,670円 |
| 再診の診察 物理療法 (電気治療、ウォーターベット) | 約110円 | 約220円 | 約330円 |
| 再診の診察 運動器リハビリ (理学療法士) | 約450円 | 約890円 | 約1,340円 |
| 初診の診察・レントゲン(6方向)・処方箋 |
| 1割負担:約900円 |
| 2割負担:約1,780円 |
| 3割負担:約2,670円 |
| 再診の診察・物理療法 (電気治療、ウォーターベット) |
| 1割負担:約110円 |
| 2割負担:約220円 |
| 3割負担:約330円 |
| 再診の診察・運動器リハビリ(理学療法士) |
| 1割負担:約450円 |
| 2割負担:約890円 |
| 3割負担:約1,340円 |
