【ガングリオン】とは?原因から治療法までを専門医がわかりやすく解説

 手首や足の甲などに、痛みはないのに不自然な「ふくらみ」や「しこり」が現れていませんか?
それは「ガングリオン」と呼ばれる、良性の腫瘤(しゅりゅう)=いわゆる“できもの”の一種かもしれません。

ガングリオンは初期のうちは痛みを感じにくいことが多いですが、そのまま放置すると徐々に大きくなり、神経や腱を圧迫して痛みやしびれを生じることがあります。
早めに整形外科を受診し、正確な診断のもとで適切な治療を受けることが大切です。

今回は「ガングリオン」について解説していきます!

目次

ガングリオンとは

 ガングリオンは、手首や足首などの関節周辺によく見られる、良性のしこりです。
骨ではなく、筋肉・神経・腱といったやわらかい組織(軟部組織)から生じるため、「軟部腫瘍(なんぶしゅよう)」の一種として説明されます。整形外科では非常に一般的に用いられる言葉です。

ガングリオンは、関節を包む膜である「関節包」から発生することが多く、関節が存在する部位であれば、体のどの場所にも生じる可能性があります。

まれではありますが、腱の周囲や背骨の椎間板付近など、
身体の深い部分に発生することもあります。

多くのガングリオンは、触れても痛みを感じないのが一般的です。
しかし、しこりが大きくなったり、神経の近くにできたりすると、神経を圧迫して痛み・しびれ・重だるさなどの違和感を引き起こすことがあります。
ガングリオンは子どもから高齢の方まで幅広い年代で見られますが、特に20〜50代の方に多く発生するといわれています。

ガングリオンの原因・なぜできるのか

ガングリオンができる原因は、実はまだ分かっていません。

“手をよく使う人に多い”“使いすぎると大きくなる”といった説もありますが、医学的に明確な根拠があるとは言い切れません。

一方で、ガングリオンができる仕組みについては、ある程度わかっています。
関節や腱を包む膜(関節包・腱鞘〔けんしょう〕)の内部にある関節液が少しずつ外へしみ出し、細い通路を通って圧の低い部分にたまり、風船のようにふくらんだものがガングリオンです。
中にはゼリー状の物質が詰まっており、粘り気の強い「ムチン」という成分を含むため、触れるとやや硬いしこりのように感じられることが多いです。

また、「20〜50代の女性に多い」と言われることがあります。
確かに女性の受診が多いのは事実ですが、これは“症状に気づいた段階で早めに受診される方が多い”という傾向も関係しています。
実際には男性や他の年代でも発生しており、「痛くないから」と放置して受診されないケースも少なくありません。

男女関係なく、注意が必要です!

ガングリオンの症状と特徴

 ガングリオンは基本的に良性の腫瘤であり、痛みがなく日常生活に支障がない場合は、経過観察のみで問題ないこともあります。ただし、次のような場合には治療を検討する必要があります。

  • しこりがどんどん大きくなっている
  • 強い痛み・圧痛がある
  • 神経が押されてしびれる、指先がピリピリする
  • 手首や指が動かしづらい、かばってしまう

このような症状が見られる場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。

また、ガングリオンは、発生する場所によって特徴や症状が少しずつ異なります。
ここでは、代表的なタイプをご紹介します。

1.ミューカスシスト(指先のガングリオン)

指先の第一関節(DIP関節)の近く、特に爪の付け根付近にできる小さなふくらみは、ミューカスシストと呼ばれます。
皮膚が薄い部分に生じるため、中のゼリー状の液体が透けて見え、まるで「水ぶくれ」のように見えることもあります。こすれや刺激で破れてしまうこともあります。

このタイプのガングリオンでは、指の第一関節が変形している(へバーデン結節と呼ばれる変形性関節症)ことが多く、再発や感染、皮膚が破れるリスクがあるため、場合によっては手術による治療が必要になることもあります。

2.手の甲にできるガングリオン(もっとも多いタイプ)

手の甲にできるガングリオンは、発生頻度が最も高いタイプのひとつです。
「気づいたら丸いしこりができていた」という理由で受診される方が多く、初期には痛みを感じないことがほとんどです。
しかし、次第に大きくなると見た目や違和感が気になり、受診されるケースが増えます。

触れたときの弾力や位置の特徴からある程度診断できますが、まれに悪性腫瘍(悪い腫瘍)が似た形を示すこともあるため、自己判断で放置せず、医療機関で確認することが大切です。

3.手首の手のひら側(掌側)にできるガングリオン

手首の親指側にできることが多く、次いで小指側にも見られるタイプです。
この部位には動脈や神経が集まっているため、ガングリオンができるとそれらを圧迫し、痛みやしびれといった症状が現れることがあります。
治療の際も、血管や神経を傷つけないよう慎重な処置が必要な部位です。

4.腱鞘内ガングリオン・腱内ガングリオン

腱を通すトンネル状の組織である腱鞘(けんしょう)の内部や、腱そのものの中に小さなガングリオンができることがあります。
指の付け根や第二関節付近、手のひら側でごま粒ほどの硬いしこりとして触れることが多く、指を曲げ伸ばしすると痛い・引っかかる・動かしにくいといった症状が現れることがあります。
そのため、腱鞘炎と間違われることも少なくありません。

5.オカルトガングリオン(隠れたガングリオン)

外からはふくらみが見えないものの、手や指のしびれ・痛みの原因となっているタイプを「オカルトガングリオン」と呼びます。
たとえば、手の表面に明らかな膨らみがないのに指のしびれや神経症状が続く場合、検査を行って初めてその存在が分かることがあります。
このタイプは手根管症候群や神経障害に似た症状を示すこともあり、見逃されやすいのが特徴です。
“隠れたガングリオン”は、超音波検査やMRI検査によって発見することができます。

ガングリオンの診断・検査

 診断は、まず問診と視診・触診から始まります。
「どの部位にできたのか」「いつ頃からあるのか」「大きさが変化しているか」「痛みやしびれなどの症状があるか」などを丁寧に確認します。
そのうえで、必要に応じて以下の検査を行い、ガングリオンの位置や大きさ、内部の状態を詳しく調べていきます。

  • レントゲン検査:骨の病気ではないことを確認する
  • 超音波検査(エコー):しこりの中身が液体か、固まりなのかを確認する
  • MRI検査:詳しく評価する

ガングリオンが強く疑われる場合には、注射器でしこりの中身(ゼリー状の内容物)を少量吸い取って確認することで、診断を確定できることがあります。
ただし、ここで重要なのは、「見た目だけで判断してすぐ中身を抜くのは危険」という点です。

まれなケースではありますが、外見がガングリオンに似ていても実際には悪性腫瘍だったという例も存在します。
もし悪性腫瘍に針を刺してしまうと、腫瘍細胞が周囲に拡がるリスクがあるため非常に注意が必要です。

そのため、安全のためにも、超音波検査やMRI検査などで“本当にガングリオンであるか”を確認したうえで処置を行うことが大切です。

「おやま整形外科クリニック仙台院」では超音波・MRIの両方の検査が受けられます!

ガングリオンの治療法(注射・圧迫・手術)

 ガングリオンの治療は、症状の強さや生活への影響の程度によって方法を選択します。

穿刺せんし

細い針をしこりに刺し、内部のゼリー状の液体を吸い出す治療法です。
しこりのサイズを小さくすることで、痛みや圧迫感などの症状をやわらげる効果があります。

破砕はさい

外から圧力を加えて、ふくらんだ袋状の部分をつぶす治療法です。
一時的にしこりが小さくなることがありますが、中の液体が再び溜まって再発する可能性もあるため、現在ではあまり一般的ではありません。

手術による摘出

「何度も再発を繰り返す場合」や「感染を起こしている場合」、「神経や血管のすぐ近くにできて強い症状が出ている場合」などには、局所麻酔を用いて袋ごとしっかり取り除く手術を行うことがあります。
根本的な治療を目的とした方法で、再発のリスクを減らすことができます。

注意が必要なのは、どの治療法を行っても再発の可能性があるという点です。
ガングリオンは、“治っては再発する”を繰り返すことの多い、やや厄介なできものです。

痛みがない場合には、すぐに治療をせず経過観察とすることも少なくありません。
一方で、痛み・しびれ・動かしづらさといった症状がある場合や、見た目が気になる場合には、治療を検討します。

ガングリオンの予防・受診の目安は?

ガングリオンは発生の原因が明確に分かっていないため、「これをすれば予防できる」という確実な方法はありません。そのため、完全に防ぐことは難しいとされています。

ガングリオンは良性の腫瘤であり、命に関わる病気ではありません。
ただし、神経を圧迫してしびれや痛みを引き起こしたり、再発を繰り返して日常生活に支障をきたすことがあります。

手首や足の甲などにボコッとしたふくらみやしこりが現れた場合、あるいは痛みやしびれを感じる場合は、放置せず整形外科に相談してください。
見た目だけでは“それが本当にガングリオンなのか”を判断することはできません。
医師が中身をしっかり確認したうえで、最も適した治療法を一緒に検討していきます。

監修医師のアドバイス

 ガングリオンは多くの場合良性で、心配のいらないできものです。
ただし、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすこともあるため、気になるしこりを見つけた際は、自己判断せずに整形外科で検査を受けることをおすすめします。

お気軽にご相談ください!

おやま整形外科クリニック仙台院での治療費の例

初診の診察・レントゲン(6方向)・処方箋
1割負担:約900円
2割負担:約1,780円
3割負担:約2,670円
再診の診察・物理療法
(電気治療、ウォーターベット)
1割負担:約110円
2割負担:約220円
3割負担:約330円
再診の診察・運動器リハビリ(理学療法士)
1割負担:約450円
2割負担:約890円
3割負担:約1,340円
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