【側弯症】と言われたら!?まず何をすべきか―治療の流れと対応

近年、脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)に関する知見が深まり、治療法や予防策も多様に発展しています。そこで今回は、脊柱側弯症の概要や原因、診断方法、治療法、そして予防策について詳しくご紹介いたします。

目次

脊柱側弯症とは

 脊柱側弯症とは、背骨が左右に弯曲(わんきょく)してしまう状態を指します。背骨は椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が連なってできており、頚椎(けいつい)7個、胸椎(きょうつい)12個、腰椎(ようつい)5個、仙椎(せんつい)5個、尾椎(びつい)3〜5個で構成されます。本来、背骨は正面から見るとまっすぐですが、側弯症があると「S」字または「C」字のように曲がります。こうした弯曲により、肩や骨盤の高さがずれる、背中や腰に痛みが出る、呼吸器や心肺機能に影響を及ぼすことがある状態を側弯症と呼びます。

側弯症とは

 側弯症は、原因や発症する時期によっていくつかのタイプに分類されます。

機能性側弯きのうせいそくわん

機能性側弯症とは、運動習慣や姿勢、左右の脚長差、椎間板ヘルニアなどによる痛みが原因一時的に背骨が弯曲する状態を指します。原因を取り除けば弯曲は比較的解消しやすいのが特徴です。生活習慣やスポーツによる左右非対称の動きから生じることもあり、例えばクラシックバレエ経験のある女子は未経験の女子に比べ側弯症の発生率が約1.3倍であると報告されています。また、痩せ型の女子に側弯症が多い傾向が見られますが、その理由については今後の研究が必要です。

構築性側弯こうちくせいそくわん

背骨のねじれを伴う側弯で、椎骨(ついこつ)自体に変形が生じており、簡単には元の状態に戻らないものを指します。主な原因には筋力のアンバランスや脚長差、疼痛反応などがあり、これらの要因が解消されれば、通常は背骨の曲がりも自然に改善することが多いです。

側弯症の原因

 側弯症には、特発性側弯症、先天性側弯症、神経・筋原性側弯症など、いくつかの原因があります。

特発性側弯症とくはつせい そくわんしょう

特発性とは「原因がはっきりしない」ことを指し、側弯症の発生原因の約80〜85%を占めます。特発性側弯症は成長期に進行しやすく、発症が早く成長期間が長いほど進行のリスクが高まります。一般に骨の成長が成熟すると側弯の進行は止まります。

特発性側弯症は、発症した年齢に応じて次のように分類されます。

  • 「乳幼児期側弯症」3歳以前に発症し、男児に多くみられます。自然に治る場合もありますが、強く進行するケースもあります
  • 「学童期側弯症」4歳から9歳の間に発症し、学童期にみられる側弯症は、その後進行する例が多く報告されています。
  • 「思春期側弯症」10歳以降に発症する思春期側弯症は、女児に圧倒的に多く、発生率は男児の約5〜8倍とされています。

先天性側弯症せんてんせい そくわんしょう

生まれつき背骨に形態異常や奇形があると、成長期に側弯症へ進行しやすくなります。側弯が急速に悪化するタイプと、ある程度の弯曲で進行が止まるタイプがあります。一般に、脊柱の異常が複雑であったり、異常をもつ椎骨が複数に及ぶほど、進行は速い傾向です。なお、先天性側弯症の約10%は、特定の遺伝子が原因で発症することが判明しています。

神経・筋原性側弯症しんけい・きんげんせい そくわんしょう

神経や筋の障害により、背骨が左右へ弯曲する状態です。とくに体重支持に関わる背筋・腹筋・股関節周囲筋が麻痺すると支持力が低下し、側弯を生じることがあります。多くは進行が速く、成長・発育が止まった後も悪化が続く場合があるため注意が必要です。

神経線維腫症しんけいせんいしゅしょうによる側弯症

別名「フォン・レックリングハウゼン病」とも呼ばれ、特有の皮膚腫瘍や色素斑によって診断されます。急速に進行する例が多く、変形により脊柱内の脊髄が圧迫されて脊髄麻痺を生じることがあるため、特に注意が必要です。

間葉系疾患かんようけい しっかんによる側弯症

エーラース・ダンロス症候群やマルファン症候群など、血管・結合組織の疾患に起因する側弯症です。とくにマルファン症候群では急速に進行することがあり、先天的な心臓や大血管の異常を伴うため、側弯症の評価とあわせてこれらの合併症の把握が不可欠です。

その他の要因による側弯症

小児期の疾患や外傷後の脊髄麻痺、放射線治療後、火傷によるケロイド、くる病などの代謝性疾患など、さまざまな要因によって側弯症が発生することがあります。

こんなにたくさんの原因があるんですね!

側弯症の症状

 側弯症が身体に与える影響は、弯曲の程度や発症年齢などによって異なりますが、主に次のような症状がみられます。

  • 「外見上の異常」 肩の高さの違い、ウエストラインの左右非対称、肋骨の突出、背中や腰の片側の盛り上がり、さらには乳房の形の左右差などが見られることがあります。
  • 「心理的ストレス」側弯による体の見た目の変化が、思春期の子どもにとって大きな心理的ストレスとなることがあります。
  • 「痛み」側弯症では、変形している背中や腰の部分に痛みや筋肉のこわばり(張り)が生じることがあります。
  • 「呼吸症状」進行すると、心臓や肺を包む胸郭が変形し、呼吸機能が低下します。その結果、肺活量が減少し、息切れを感じやすくなります。
  • 「神経症状」先天性側弯症や神経線維腫症などによって局所的に大きな弯曲が生じる場合、脊髄が圧迫され、脊髄麻痺を引き起こす可能性があります。

脊柱側弯症の診察・検査

  • レントゲン検査

側弯症の正確な診断にはレントゲン検査が不可欠です。弯曲の大きさは、上下で最も傾いている椎骨間の角度で評価し、この角度が10°以上なら側弯症と診断します。40〜50°を超える場合には手術の検討対象となります。レントゲンで機能性側弯や、治療を要しない軽度の構築性側弯と判定された場合でも、進行の可能性に十分留意し、経過観察を行うことが重要です。

  • 立位検査

後ろ向きにまっすぐ立った姿勢を観察し、肩の高さの左右差、肩甲骨の高さや突出の違い、ウエストラインの左右非対称などを確認します。

  • 前屈検査

両手のひらを合わせ、肩の力を抜いて腕を自然に垂らし、膝を伸ばしたままゆっくり前におじぎをします。その姿勢で、肋骨や腰のどちらかが盛り上がっていないか、また左右の高さに差がないかを確認します。

側弯症は、ご家族によって気づかれることもあります。たとえば、一緒に入浴しているときに背中の左右差に気づいたり、洋服を新しく買う際に肩や背中のラインが合わない、ズボンやスカートの丈が左右で異なるなどの違和感から発見されることがあります。

学校の定期健診で指摘され、発見に至るケースが多いです!

側弯症の治療

 側弯症の治療は、背骨の弯曲の程度(コブ角)、年齢、そして骨の成長の進み具合によって判断されます。主な治療法は以下の3つです。

1. 経過観察

  • コブ角が20~25度以下の軽い側弯
  • 3~6か月ごとに専門医の診察で進行を確認

2. 装具治療

  • コブ角25~40度の軽度~中等度の側弯
  • 装具の目的は「進行を防ぐこと」
  • 成長が終了した時点で弯曲が30〜35度以下であれば、大きな問題が生じることは少ないとされています。しかし、35度を超える場合には、将来的に手術が必要となる可能性があります。

3. 外科手術

  • 背骨をできるだけまっすぐに近づけ、進行や痛み・呼吸機能の低下を防ぐ目的で実施します。
  • 主な方法は、背中や体側から椎骨を固定する手術です。
  • 安全性確保のため手術中は脊髄モニタリングを行い、合併症のリスク低減に努めている施設が多いです。
  • 現在は術後1週間以内に歩行を開始し、2~3週間で退院できる例が多くみられます。

患者さま一人ひとりの状態や生活に合わせて、最適な治療(観察・装具・手術・リハビリ)をご提案します。気になることはお気軽にご相談ください。

監修医師のアドバイス

 側弯症の症状は、軽度で日常生活に支障のないものから、神経症状を伴う重度のものまでさまざまです。また、進行の速度も原因によって異なります。多くの脊柱側弯症は若年期に発症するため、側弯の改善や進行の防止には、できるだけ早期からの治療が重要です。

お気軽にご相談ください!

おやま整形外科クリニック仙台院での治療費の例

初診の診察・レントゲン(6方向)・処方箋
1割負担:約900円
2割負担:約1,780円
3割負担:約2,670円
再診の診察・物理療法
(電気治療、ウォーターベット)
1割負担:約110円
2割負担:約220円
3割負担:約330円
再診の診察・運動器リハビリ(理学療法士)
1割負担:約450円
2割負担:約890円
3割負担:約1,340円
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