【腱鞘炎】親指の付け根がズキッ!ドケルバン病の症状・原因・セルフチェックと治療法

「親指を広げた瞬間にズキッと痛む」「物を持った途端に手首がビリッとしびれる」——もしこんな経験があるなら、それはドケルバン病のサインかもしれません。今回は、この身近なのに意外と知られていない“腱鞘炎の一種”ドケルバン病について詳しくお話しします。

目次

ドケルバン病とは

ドケルバン病は、正式には「狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)」と呼ばれ、親指の腱が通る道が狭くなることで起こる腱鞘炎の一種です。

親指を大きく広げると、手首の親指側に2本の筋(すじ)が浮き出てくるはずです。これが、親指を動かす「短母指伸筋(たんぼししんきん)」と「長母指外転筋(ちょうぼしがいてんきん)」の腱です。ドケルバン病では、この2本の腱が手の甲側にある「腱鞘(けんしょう)」というトンネル状の通り道を通る際に炎症が起こり、痛みや動かしにくさを引き起こします。

これ骨だと思ってましたが、腱だったんですね!硬い!

親指を酷使すると、腱の通り道である腱鞘が炎症で腫れて厚くなり、その内部のスペースが狭くなります。同時に腱の表面にも傷がつき、さらに動かし続けることで腫れや損傷が悪化し、痛みが増すという悪循環に陥ります。

特に親指の手の甲側にある腱鞘は「手背(しゅはい)第1コンパートメント」と呼ばれ、この中には短母指伸筋腱(親指を伸ばす腱)と長母指外転筋腱(親指を広げる腱)の2本が通ります。さらに、この2本を隔てる仕切りのような壁が存在するため、通り道がいっそう狭くなりやすく、腱鞘炎が悪化しやすいという特徴があります。

ドケルバン病の症状

ドケルバン病とは、手首の親指側にある腱の通り道(腱鞘)と、その中を通る2本の腱に炎症が生じた状態です。炎症によって腱の動きが妨げられ、手首の親指側に「痛み」や「腫れ」が現れます。特に、親指を動かしたときに症状が強くなるのが大きな特徴です。

ドケルバン病の原因

以前は、ピアニスト・美容師・職人など、手を酷使する職業の方に多く見られる病気でした。ところが近年では、スマホやパソコンの使用によって手や指を頻繁に使う人が増え、職業に関係なく発症するケースが増加しています。

また、妊娠・出産期や更年期の女性にも多く見られます。これは、卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」が減少することが、発症に関与していると考えられています。

スマホの使い過ぎには注意が必要です!

ドケルバン病の診断

次のような動作で親指の付け根(手首の親指側)に痛みが出る場合は、ドケルバン病が疑われます。

  • 親指を反対の手で握り、小指の方へ引っ張る
  • 親指を内側に倒して他の指で覆い、そのまま手首を小指側へ倒す
  • 手首をできるだけ直角に曲げ、親指を伸ばして人差し指の間を大きく広げる

無理のない範囲で、セルフチェックしてみてください!

ドケルバン病の治療

STEP
安静・鎮静・固定

まずは安静を保つことが大切です。必要に応じて「シーネ」と呼ばれる添え木で親指を固定し、動かないようにします。また、貼り薬や塗り薬などの消炎鎮痛剤を使って炎症を和らげます。これらで十分な効果が得られない場合は、飲み薬の消炎鎮痛剤を使用することもあります。

STEP
注射

ステップ1で症状が改善しない場合は、注射による治療を行うことがあります。一般的には、局所麻酔薬の「キシロカイン」と、炎症を抑えるステロイド剤「ケナコルト」を併用します。効果は非常に高く、多くの場合、注射して帰宅する頃には痛みが和らいでいます。効果はおおよそ3か月から半年ほど持続します。

適切な場所に注射されると、効果抜群です!

同じ箇所への注射を何度も繰り返すと腱に負担がかかり、最悪の場合は腱が切れてしまう恐れがあります。そのため、同じ指への注射は通常2回までにとどめるのが一般的です。

STEP
手術

最後の治療法は手術です。
たとえば、注射で症状が改善しても半年後に再発し、さらにもう一度注射してまた半年後に再々発した場合、3回目の注射は腱への負担が大きくなるため、通常は行いません。

そのようなケースでは「腱鞘切開術(けんしょうせっかいじゅつ)」という手術を行います。局所麻酔で日帰り手術が可能で、腱を覆っている腱鞘の一部を切開して通り道を広げることで、腱がスムーズに動けるようにします。切開するのは腱鞘の一部だけなので、指の機能に支障はありません。手術後1〜2週間ほどで抜糸(手術時に縫った糸を取り除く処置)を行い、治療は終了します。

費用は3割負担の場合でおよそ1万円程度です。また、加入している医療保険や生命保険によっては手術費用が補償されることもあるため、事前に保険会社へ確認しておくと安心です。

ドケルバン病の予防

痛みが出る前に、ドケルバン病を予防しましょう。簡単ではありませんが、親指をできるだけ使わず安静を保つことが何より大切です。手首に負担をかけないよう、ひねる動作を減らし、スマホやパソコンの長時間使用は控えて適度に休憩を取りましょう。また、少しでも違和感や痛みを感じたら、早めに湿布などで炎症を抑えることが予防につながります。

特に女性は、ドケルバン病の原因の一つとされる“エストロゲンの減少”を予防することも意識しましょう。エストロゲン低下を防ぐためには、食事と運動の両面からの対策が有効です。

食事

納豆やお豆腐などの大豆食品、ビタミンE、B6を含んだアーモンドやアボカド、カツオやレバーなどを摂ると良いです。
これらは植物性エストロゲンを多く含んだり、エストロゲン分泌のサポートをしてくれます。

運動

特に下半身の筋肉を鍛えることが有効です。下半身を鍛えることで、骨盤内の血流が改善され、卵巣機能の維持に寄与することが報告されています。無理のない範囲で、スクワットなどを取り入れてみると良いかと思います。

「おやま整形外科クリニック仙台院」では、たくさんの理学療法士が患者さまに運動指導を行っています。

効果的なストレッチ方法など、お気軽にご相談ください!

せんだい整形外科クリニックでの治療費の例

初診の診察・レントゲン(6方向)・処方箋
1割負担:約900円
2割負担:約1,780円
3割負担:約2,670円
再診の診察・物理療法
(電気治療、ウォーターベット)
1割負担:約110円
2割負担:約220円
3割負担:約330円
再診の診察・運動器リハビリ(理学療法士)
1割負担:約450円
2割負担:約890円
3割負担:約1,340円
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